第289章

 望月琛は心臓が早鐘を打つほどの緊張に襲われていた。彼は問答無用とばかりに車を回すと、母娘のそばに横付けする。

「乗れ! 病院へ送る」

 前田南は娘を抱きかかえたまま、迷わず車に乗り込んだ。望月琛はハンドルを握りしめ、病院へ向かって車を急がせる。

 幸いなことに病院までの距離はそれほど遠くなく、車はすぐに目的地へと到着した。

 小児科の待合室。前田南は不安に駆られ、落ち着きなく行ったり来たりしている。その様子を見ていた望月琛が歩み寄り、彼女をなだめようと声をかけた。

「南、落ち着け。ククはただの熱だ。ここならすぐに治る。あいつは大丈夫だ」

 しかし前田南は首を横に振るだけで、唇を...

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